顎関節症とは
顎関節症(がくかんせつしょう)は、顎の関節や周囲の筋肉に痛みや機能障害が生じる病態です。顎の動きに関わる関節や筋肉、神経が集中しているため、複雑な症状が現れます。
例えば、顎を大きく開けると痛みが出たり、口の開閉がスムーズにできなくなったりします。顎関節症は特に若い女性に多く見られ、放置すると顎の症状だけでなく、肩こりや頭痛など全身の不調を引き起こすことがあります。
顎関節症の症状
顎関節症の代表的な症状は次のとおりです。
顎の痛み
上顎と下顎の関節部分やその周辺の筋肉に痛みが生じます。特に食事や会話など、顎を動かす際に痛みが増すのが特徴です。
開口障害
正常時には指を縦に3本分(約4~5cm)入る程度に口を開けられますが、顎関節症では2本分(約3cm)以下しか開かない場合があります。
顎関節の雑音
顎を動かすと耳のあたりでカクカク、ミシミシ、ジャリジャリといった雑音が生じることがあります。
咀嚼筋の痛み
噛み合わせがずれるため、物を噛んだ際に筋肉に違和感や痛みを感じることがあります。
口を完全に閉じられない
顎関節内の異常により、上下の歯が完全に噛み合わなくなり、口を閉じることが難しくなります。
顎関節症の原因
噛み合わせの悪さ
顎関節症の原因の一つに噛み合わせの悪さがあります。上下の顎のサイズのバランスが悪いと、噛み合わせがうまくいかず、顎関節に負担がかかります。
例えば、「受け口」や「出っ歯」といった状態は、このバランスの悪さが原因です。これらの状態は遺伝や生活習慣の影響を受けます。両親から受け継いだ骨格や歯の大きさも関係しており、これが顎のゆがみにつながることがあります。このため、顎関節症の治療には噛み合わせの改善や矯正治療が含まれることが多いです。
生活習慣
いくつかの生活習慣も顎関節症の原因となります。具体的には以下のような習慣が挙げられます。
- 頬づえ:頬に力をかけることで顎に負担がかかり、顎関節症を引き起こします。
- 悪い姿勢:長時間のデスクワークなどで姿勢が悪いと、顎関節に不自然な力がかかり、症状を悪化させます。
- TCH(歯列接触癖):上下の歯を無意識にくっつける癖があると、顎の筋肉に過度な負担がかかります。これは多くの顎関節症患者に見られる習慣です。
ストレス
ストレスも顎関節症の大きな原因の一つです。強いストレスは日中の食いしばりや夜間の歯ぎしりを引き起こし、顎の筋肉が緊張しやすくなります。これにより、顎関節に負担がかかり、症状が悪化します。ストレスを軽減するためには、適度な運動や趣味を持つことが効果的です。また、ナイトガードと呼ばれるマウスピースを使用することで、寝ている間の歯ぎしりを防ぐことができます。
外傷
スポーツや事故などによる顎への外傷も顎関節症の原因となります。例えば、ラグビーやボクシングなどの接触スポーツでは、顎に強い衝撃が加わることがあります。このような場合、スポーツマウスピースを装着して顎を保護することが重要です。瞬間的に強い力がかかると、顎関節症だけでなく、顎の骨折や変形を引き起こすリスクもあります。
顎関節症の治療
ナイトガード
顎関節症の治療法の一つに「ナイトガード」があります。ナイトガードは、睡眠中の歯ぎしりや食いしばりを防ぐための薄いマウスピースで、上顎に装着して使用します。この装置は、歯や顎にかかる負担を軽減し、知覚過敏や歯周病、顎関節症の予防に効果的です。
当院では、内科の先生と連携して歯ぎしり防止のマウスピース作成を行っております。
ナイトガードで得られる効果
歯や顎にかかる負荷を軽減。歯が削れることを予防できます。
ナイトガードは、睡眠中の無意識の歯ぎしりや食いしばりによる歯や顎への過度な負荷を分散します。歯ぎしりや食いしばりの力は、日常的な食事時の何十倍にもなることがあります。例えば、体重が50kgの人の場合、100kgから250kgもの力がかかることもあります。ナイトガードを使用することで、こうした負荷を軽減し、歯が削れることを防ぐことが可能です。また、マウスピースの摩耗具合から自分の歯ぎしりの程度を確認することもできます。
かみ合わせのずれを調整できる
オーダーメイドのナイトガードは、歯型とかみ合わせを基に作成されます。そのため、患者さんのかみ合わせにしっかりフィットし、ずれていたかみ合わせを修正することができます。正しいかみ合わせは、歯ぎしりや食いしばりを防ぐためにも重要です。
親知らず
親知らずは、乳歯から永久歯に生え替わった後に一番奥に生えてくる歯で、15歳から30歳頃に出現します。親知らずが斜めや横向きに生えると、隣の歯や歯茎に悪影響を与えることがあります。これにより、顎関節に負担がかかり、顎関節症を引き起こす可能性があります。